おとぎ話

2004年11月10日
昔々ある国に、それはそれは美しいお姫様がおりました。
お姫様は、一度隣国に嫁ぎましたが
嫁ぎ先の王子が浮気をしてしまい
数年前に、再びお城に戻ってきておりました。

来る日も来る日も、お姫様は寂しげな目で窓の外をみつめ
いつかもう一度、純白のウェディングドレスに身を包み
再び城を旅立つことを夢見ておりました。

そんなお姫様を、門番の一人は、毎日見つめていました。
はじめは、あまりの美しさに目を奪われ
やがて、お姫様の心中を察するようになると心までも奪われて、
いつしか、お姫様に、恋をしてしまいました。

ある日、心地よい風が吹く夜、
門番は、思い切ってお姫様への思いを手紙に書き
紙ヒコーキにして、開け放たれたお姫様の窓へ飛ばしました。

お姫様も、さみしかったのでしょう。
しばらくして、返事の紙ヒコーキが届きました。

そうして、紙ヒコーキのやりとりを続けるうち、
お姫様は、最初はさりげなく、そして、いつしか、門番を見つめ、
笑顔を浮かべるようになりました。

門番は有頂天になり、
毎日毎日、何度も何度も紙ヒコーキに思いを乗せて
送り続けました。

そんなある日、門番が明け放った門から
大きな馬車が、城内に入城してきました。

馬車からは、お姫様にお似合いの、
見るからに高貴な王子様が降り立ちました。

うやうやしくお姫様の手を取る王子。
夢見ていた相手が現れたかもしれないという幸せに
不安を浮かべながらも、はにかむお姫様。

お姫様は、王子に手を取られて、
ゆったりと城の奥へと消えて行きました。

やがて門番は、一人きりで、お姫様を守る城の門を閉め
門の外で、お姫様に一通の手紙を書きました。
だけど、最後の紙ヒコーキを飛ばす、心地よい、柔らかな風は
もうどこにも吹いていませんでした。



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