書いている途中にESCを押すと、みんな消えちゃうんだね。
なにも残らないんだね。
もう、覚えてないや。
包丁を持つ手を
最後にそう書いた。
包丁を持つ手をゆっくりと動かして
するどい刃を指先に当てると
指紋のひだひだに、吸い付くように
刃先が肌を吸い込んで
血が 刃先を伝う
そのまま、キッチンに
血がたれたら
止めよう
そう思って、
固まった言葉を
頭の中に、キンキンに凍らせて
あの人を思うと、
勝手に右手が包丁を引いてしまう
あの人は
遠くに居て
近づくほどに
終わりがやってきて
後戻りすることも
進むこともできず
それを心配そうに見つめるあなたは
手を差し伸べるわけでもなく
嘲笑するわけでもなく
違う私になれ
と言う
違う私になれ
と言う
いっそ、肉食獣になって
あなたの体をすべて飲み込んで
そのまま崖から飛び降りれば
再び新しい生命が
微生物となって
食物連鎖を支えていく
行かないで
どこにも行かないで
そばにいて
ここに
ひじが触れる距離に
触れないように努力するから
ここにきて
あなたに恋をしていることを
隠し通してみせるから
ここに
きて
。
なにも残らないんだね。
もう、覚えてないや。
包丁を持つ手を
最後にそう書いた。
包丁を持つ手をゆっくりと動かして
するどい刃を指先に当てると
指紋のひだひだに、吸い付くように
刃先が肌を吸い込んで
血が 刃先を伝う
そのまま、キッチンに
血がたれたら
止めよう
そう思って、
固まった言葉を
頭の中に、キンキンに凍らせて
あの人を思うと、
勝手に右手が包丁を引いてしまう
あの人は
遠くに居て
近づくほどに
終わりがやってきて
後戻りすることも
進むこともできず
それを心配そうに見つめるあなたは
手を差し伸べるわけでもなく
嘲笑するわけでもなく
違う私になれ
と言う
違う私になれ
と言う
いっそ、肉食獣になって
あなたの体をすべて飲み込んで
そのまま崖から飛び降りれば
再び新しい生命が
微生物となって
食物連鎖を支えていく
行かないで
どこにも行かないで
そばにいて
ここに
ひじが触れる距離に
触れないように努力するから
ここにきて
あなたに恋をしていることを
隠し通してみせるから
ここに
きて
。